病気の話
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インフルエンザの予防接種は本当に有効ですか?
インフルエンザの予防接種を受けたら絶対にインフルエンザにかからないというわけではありません。
インフルエンザの発病阻止率は、成人の場合は70〜90%、小児の場合には20〜40%くらいと言われています。 “なんだ。それじゃ予防接種してもしょうがないな。”と感じる方もいるのではないかと思いますが、 インフルエンザに感染しても軽症ですむ確立はずっと高く、インフルエンザ脳症などの重症化を減らすのに有効なのではないかとも言われています。 予防接種は病気にかかりにくくしたり、かかっても重くならないようにすることが目的だとご理解ください。
インフルエンザの予防接種が病気を防いでくれるメカニズムは、インフルエンザウイルスの表面たんぱく質がワクチンには含まれていて、 一回注射するとリンパ球が反応を起こし、ウイルスを撃退するための抗体が産生されます。 しかし、この反応は短期間に消失し、病気を予防するには弱いものです。 2回目の注射で前回に刺激されたリンパ球がさらに強く反応を起こし、また、長期間にわたって十分量の抗体を作るようになるので、 予防接種を2回打つことが望ましいのです。
昨年、インフルエンザに感染したから(予防接種をしたから)、今年は一回でいいのではないか、と思われる人もいると思いますが、 インフルエンザには、A、B、Cと大まかに3種類に分かれた後、さらに細かく種類が無数にあるので、昨年の流行やワクチンと、 今年の流行やワクチンは種類が違います。 流行もワクチンも毎年変わるので、毎年接種されることをお勧めします。
接種を続けると基礎免疫がつき、有効率があがることもわかっています。
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髄膜炎
脳をつつむ髄膜に、ウイルスや細菌が感染して起こる病気です。 症状は発熱、頭痛、嘔吐がみられますが、頭痛か嘔吐のどちらかが欠けることもあります。 入院治療が必要となりますが、ウイルスによるものは後遺症を残すほどに重症になることは少なく、 1週間弱の入院治療で良くなることが多いですが、まれにウイルスが繁殖し脳炎を引き起こしてきて、 重篤になる場合もあります。 細菌によるものは重症のものが多く、後遺症を残すことや死亡する場合も少なくありません。 発熱、頭痛、嘔吐が見られたら、病院に受診しましょう。
アデノウイルス感染症
現在流行しているウイルス感染症です。
感染者の咳や便に含まれているウイルスが、他者の口や目に侵入し発症します。
このウイルスにはいくつもの種類があり、咽頭炎、扁桃炎、肺炎、咽頭結膜熱(プール熱)、 流行性角結膜炎(はやり目)、突然血尿が出る急性出血性膀胱炎、 急性胃腸炎などいろいろな病気をおこします。
通常は1週間ほどの経過で良くなっていくことが多いですが、まれに脳炎をおこし、 死亡することもある病気です。
早めの水分補給や安静にすることが大切です。 高熱、目の充血、下痢などがみられたら、受診してください。
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手足口病
エンテロウイルスによる感染症です。
発熱はそれほど高くはありませんが、口の中、手、足、ひざ、ひじ、おしりなどに水疱などの発疹ができます。 口の中か手足の、どちらか一方だけの場合もあります。
通常は1週間ほどの経過で良くなっていくことが多いですが、 食べ物がたべられないほど口の中が痛くなることもあり、また髄膜炎をおこすこともあるので、注意が必要です。
溶連菌感染症
小学生くらいまでのお子さんのあいだで流行している、細菌感染症です。
風邪のほとんどはウイルスが原因ですが、この病気は溶連菌という細菌が原因です。 おもに咳により他者へ感染し、潜伏期間は2〜3日です。
最初にのどの痛み、発熱がみられ次に舌の表面にイチゴのようなつぶつぶができます。 下腹部やももなどに、赤くこまかい発疹ができることもあります。
感染すると、腎臓や心臓に影響をあたえることがあるので、 しっかり抗生剤を10日間飲まなければなりません。 そのため、抗生剤を10日間内服した後に検尿を行い、腎臓に影響がないかを確かめています。
また、溶連菌には何回も感染することがあり、その度に同様の治療を行う必要があるので注意して下さい。
この病気はのどに独特の赤みが出てそれが診断の決め手になります。 受診前にご家庭で抗生剤を飲むと、のどの赤みが消えて発見されにくくなりますので、 抗生剤を内服した場合には医師に伝えて下さい。
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ヘルパンギーナ
いわゆる夏風邪です。
エンテロウイルスが原因でおこります。 便、唾液から感染し、潜伏期間は1週間程度で、突然の高熱とともに口のなかに小さく赤い水ぶくれができます。
手足口病の水ぶくれと似ているため、区別がつきにくいこともあります。 嘔吐や腹痛がみられることもあります。 これらの症状は3日くらいでよくなりますが、なおるまでは口のなかが痛み、 食べ物やときには水分もとれなくなります。
熱が高いときは解熱剤の使用やクーリングをおこなうなどして、水分をしっかり与え、 食べ物は味がうすくやわらかい、ぬるめのしみないものを与えるようにしましょう。
水分がとれなくなったら、点滴が必要ですので受診し、症状の軽減につとめましょう。
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食中毒
食中毒の直接の原因は、飲食物などに含まれていた有害・有毒な原因物質を摂取することによります。
その原因物質が直接に毒物として作用する場合と、原因物質が微生物であり、 その増殖によって消化管感染症を発症する場合に分けられます。 前者を毒素型食中毒、後者を感染型食中毒と呼び、特徴が異なります。
毒素型食中毒の場合、食べ物についた細菌を殺して除いても、毒素が残っていれば食中毒が発生します。
感染型食中毒は予防が重要ですので、下記のことを守って下さい。
 家庭でできる食中毒予防の5つのポイント
@ 食品の購入 新鮮な物、消費期限を確認して購入する等
A 家庭での保存 持ち帰ったらすぐに冷蔵庫や冷凍庫で保存する等
B 調理 手を洗う、十分に加熱する(75℃、1分以上)
C 食事 手を洗う、室温に長く放置しない等
D 残った食品 きれいな器具容器で保存し、再加熱する等
代表的な食中毒の原因菌
 黄色ブドウ球菌 (生体外毒素型)
人の手に常在する細菌によるエンテロトキシンという毒素によって発症。
潜伏期は約3時間。 症状はおう吐、下痢、腹痛など。
要注意な食品は食品全般。
予防は、加熱してもこの毒素は消えないので、調理中の手洗いを心がける。 大きなアカギレなど、手に傷のある時はゴム手袋や指サックなどを使うようにして、 食材には直接触れないようにする。
 サルモネラ属菌 (感染侵入型)
潜伏期は10〜72時間。 症状は発熱、粘血便、腹痛など。
要注意な食品 卵、肉など。
細菌のすみかは家畜やニワトリの腸管内。 卵は表面(殻)はもちろん、中身も汚染されている可能性がある。 イヌ、ネコ、ミドリガメ、ヘビのペットにも高頻度で住みついている。
予防は加熱。 熱に弱いので加熱調理で容易に殺菌できる。 熱処理を行わない食品(卵原料の生クリームやアイスクリームなど) は菌が増殖しないよう早めに食べる。
 腸炎ビブリオ (感染毒素型)
海水に存在するこの菌は、海産魚介類に付着して食中毒を引き起こす。 海水温が上昇する夏季はとくに要注意。
増殖力が強く、二次感染を起こすので、調理器具の扱いには注意が必要。 潜伏期は5〜20時間。
症状は下痢、腹痛、発熱など。
要注意な食品は海産魚介類など。
予防は調理中での二次感染を防ぐ。 手やまな板など、調理器具などの清浄に努める。 海産魚介類を調理したまな板や包丁を、洗わずに他の食材の調理に使用すると、 別の食材にもうつるので要注意。
温度管理を徹底し、生鮮魚介類は全て10℃以下に保存する。 調理器具は、使用後70℃以上の熱湯で殺菌する。 加工済みの食品はできるだけ早く食べる。
 ポツリヌス菌 (生体外毒素型)
食中毒原因菌の中でも特に死亡率が高いため、 重症になる前の迅速な判断と処置が求められる。 酸素のないところで生息する“嫌気性菌”なので、発酵食品や缶詰、 真空パックの食品も安心できない。
ただし、毒素は加熱処理で死滅する(80℃、30分で不活化)。 潜伏期は10〜40時間。
症状は複視、発声障害、嚥下障害(ものが飲み込みずらくなる)、呼吸障害など。
要注意な食品は密封食品(びん、缶詰など)。 細菌のすみかは土壌。
予防は缶詰、瓶詰め、真空パックが膨れあがっているような食品は食べない。 袋の中でボツリヌス菌が増殖している可能性がある。
乳幼児の離乳食に、蜂蜜は用いない―ボツリヌス菌が含まれていることがあります。
蜂蜜の他にも土やゴミに含まれていることもあるので、拾い食いなどをさせないよう、注意が必要。
 病原性大腸菌 (感染毒素型)
潜伏期は2〜9日。
初期症状は発熱、かぜ様症状、血便、激しい腹痛
要注意な食品は肉が最も危険
保存や調理過程で他の食材を汚染しないよう注意が必要。 井戸水など、水の汚染にも注意をはらう。 すみかは動物などの腸管内。
予防は加熱─大腸菌は熱に弱い。 十分な加熱が必要。 特にミンチ肉は中まで熱が通るよう心がける。
調理器具の乾燥、清潔はもちろん、なま食の食材は水道水でよく洗う。
病原性大腸菌は人が保菌しているので手指からの汚染を防止する。
飲料水の汚染に注意。 井戸水を含め、汚染のおそれのある水の使用には十分注意し、飲料には絶対に使用しない。 食材を洗うときの水も清潔なものを使用すること。
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アレルギー性鼻炎の治療法
3大症状 くしゃみ・鼻汁・鼻づまり

【はじめに】
アレルギー性鼻炎とは、ある物質(抗原)が鼻に入り、鼻の粘膜にアレルギー反応が引き起こされることによる病気で、くしゃみ、鼻みず、鼻づまりが3大症状です。 アレルギー性鼻炎には、ダニやハウスダストなどによって起こる通年性アレルギー性と、スギ花粉などによって起こる季節性アレルギー性鼻炎(花粉症)があります。 通年性アレルギー性鼻炎の方は、全国的には約18%いるといわれています。 花粉症は、スギ花粉症がよく知られていて、花粉症の約70%を占めていますが、スギ以外でもヒノキ、カモガヤ、ブタクサ、シラカバなどがあります。 スギ花粉症の方は、全国的には15%程度いるといわれています。

【アレルギー性鼻炎の治療】
アレルギー性鼻炎の治療としては、症状をやわらげ、生活の不都合をなくし、生活の質を向上させるのが目的となります。 それぞれのライフスタイルや症状に応じて治療法を選択していくのが良いと思われます。
抗原の除去と回復
これは、だれもが行えるもので、アレルギー性鼻炎の治療の第一歩です。
積極的にこころがけましょう。

A.室内ダニの除去
1.室内の掃除には、排気循環式の掃除機を用いる。1回20秒/m2の時間をかけ、
    週に2回以上掃除する。
2.布製のソファー、カーペット、畳はできるだけやめる。
3.ベッドのマット、布団、枕にダニを通さないカバーをかける。
4.室内の湿度を50%、室温を20〜25℃に保つよう努力する。

B.スギ花粉の回避
1.花粉情報に注意する飛散の多いときは、窓・戸を閉めておく。
2.飛散の多いときは、外出時にマスク・メガネを着用する。
3.外出時、毛織物などのコートは避ける。
4.帰宅時、衣服や髪をよく払い入室する。洗顔、うがいをし、鼻をかむ。

C.ペット抗原の減量
1.できれば飼育をやめる。
2.できれば屋外で飼い、寝室に入れない。
3.ペットとペットの飼育環境を清潔に保つ。
4.床のカーペットをやめ、フローリングにする。
5.通気をよくし、掃除を励行する。
薬物治療
薬による治療には、くしゃみや鼻みずにより効果のあるもの、鼻づまりに良く効くもの、症状のひどいときに短期間のみ飲むものなど、それぞれに特徴があります。
また効果の高いものでも副作用の面で、眠気の強いものもあるので、症状や程度、さらにライフスタイルに合ったものを選択する必要があります。 また服用の時期も、花粉症の場合は、シーズン前からアレルギー治療薬を飲み始めるという、初期療法が有効なので、医師と相談してみてください。

重症度・病型・治療グラフ

以上の治療法以外にも、日常生活で、ストレスを避け、睡眠を十分とる。風邪を引かないように心がける。タバコ・アルコールは控える。栄養の偏らない食生活を送る。などが、アレルギー性鼻炎の症状の緩和に役立つと思われます。

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口腔アレルギー症候群(OAS)
口腔アレルギー、あるいは「花粉‐食物アレルギー症候群」は珍しい病気ではなく、普段から、口唇の腫脹やのどのイガイガ感などを感じていて、食べるのを控えている方もいらっしゃると思います。
口腔アレルギー症候群(oral allergy syndrome;OAS)は、通常は花粉症の患者さんが、新鮮な果物、野菜、ナッツ類などの摂取した時に出現する、主として口腔咽頭の粘膜のかゆみや腫れなどの症状をさしています。この食物アレルギーは、花粉アレルゲンと野菜や果物などの植物性食物アレルゲンに共通する抗原分子によって生じるものと考えられています。「シラカバ花粉症の患者さんがリンゴを食べると、口がかゆくなる」というのはその代表例です。原因となる食物を食べると、約15分以内にそれらが触れた口腔、口唇、咽頭部に刺激感、かゆみ、突っ張り感などが現れます。鼻や眼の花粉症様の症状や、じんましんや血管浮腫、腹痛、嘔吐、下痢、咽頭閉塞感、喘息、アナフィラキシーなどを伴うこともあります。

食品には花粉と交差抗原性(アレルギーの原因となる物質が共通して含まれていること)があるため、年長児や大人では花粉症を起こした後に口腔アレルギー症候群を起こす場合が多いといわれています。年少児では、果物を多食することでアレルギーを起こす可能性が考えられています。もちろん、卵や牛乳、小麦などの食物、ダニ、ペットの抗原、花粉などが粘膜に接触することでも同様の状態が生じます。同じ科に属する果物や野菜ではアレルギーを生じやすくなります。
しかし、科が違っても共通抗原を持っている場合もあります。例えば、セロリ,パセリ,ニンジン,モモ,ナシ,ジャガイモ,シラカンバ花粉のグループは、そのうちの1つでアレルギーを起こすと、他の果物にもアレルギーを起こす可能性があります。他にも、分かっているだけで、たくさんあり下の表にまとめてみました。
シラカバ(カバノキ科)は北海道に多く、アレルギーを起こす人が増えてきています。西日本ではオオヤシャブシ(カバノキ科)の花粉症との関係が指摘されています。関東では、シラカバと同じブナ目のブナ科花粉症の人たちが、同様の症状を起こすのではないかと考えられています。

花粉-食物アレルギー症候群
花粉の種類 症状出現に関連する食物
カバの木花粉 果物 キウイ,リンゴ,洋ナシ,プラム,プルーン,モモ,ネクタリン,アプリコット,チェリー
植物 セロリ、ニンジン、オランダ(アメリカ)ボウフウ,パセリ,ディル,アニス,クミン,コリアンダー,キャラウェイ,フェンネル,ポテト,トマト,グリーンペッパー,レンチル,エンドウ,インゲン豆,ピーナッツ
ナッツ類 ヘーゼルナッツ,ウォールナッツ,アーモンド
種子類 ヒマワリ
ブタクサ花粉 果物 バナナ,スイカ,マクワウリ,(樹皮,アブラムシなどの)みつ
植物 ズッキーニ、キュウリ
イネ花粉 果物 メロン,スイカ,トマト,オレンジ,キウイ
ヨモギ花粉 果物 リンゴ,スイカ,メロン
植物 セロリ,ニンジン

果物のアレルギーがある場合、「ラテックス」(ゴム)にもアレルギーを起こしている場合があることも知られています(ラテックス−フルーツ症候群)。ラテックスとは工業用のゴム原料として栽培されているヘベア樹から得られた樹液で、ゴムそのものではなく、天然ゴムの中に含まれるラテックス蛋白です。
ラテックスアレルギーは、医療用のゴム手袋、看護用品などが原因になることが多く、アトピー性皮膚炎の患者さんに合併しやすいとされています。多くは接触蕁麻疹の症状ですが、時に重大なアナフィラキシーショックを起こします。
そのため、ラテックスに対してアレルギーを起こしている場合には、下のような食品・花粉にアレルギーを起こしやすくなる可能性があるため、特に注意が必要です。
〔ラテックスと共通抗原のあるもの〕
バナナ、キウイ、クリ、アボガド、クルミ、トマト、パパイヤ、グレープフルーツ、ジャガイモ、メロン、イチジク、ピーナッツ

〔口腔アレルギー症候群(OAS)の症状を持つ患者さんへの注意〕
1) あなたのアレルギーは新鮮な生の果物や野菜によって引き起こされています。それらを加熱・調理したり加工(缶詰めなど)すれば摂取することが可能になるものがあります。電子レンジや80〜90度の熱で加熱するなどの工夫や加工をしましょう。
2) なんらかの食物を食べてOASだと気づいた場合、一覧表に示した他の食物にもアレルギー反応を起こす可能性はあります。しかし一覧表にあるような食べ物をすべて回避する必要はありません。先ずはアレルギー症状を実際に引き起こしたもののみ避けてください。
3) アレルギー反応を起こした食物は、摂取することをやめてください。摂取を続けていると、さらに重篤な症状(全身症状やショック)が出現することがあります。
4) アレルギー反応を引き起こす食物を摂取して、呼吸困難などの重篤な症状が出現した場合には、エピネフリンなどですぐに治療する必要があります。救急病院を受診してください。
5) それほど重篤ではないOASの場合で、OASの有無を確認するためには、症状が出現した果物の皮をむいてみたり、その果物の新鮮なものを極少量、食べてみてください。もし症状が出現した場合は、以後その果物を食べる事をやめましょう。
6) ナッツによるOASの場合は、新鮮でも、調理してあっても、重篤症状を引き起こす可能性が高いので、ナッツ類は完全に避けてください。
7) OASは抗ヒスタミン剤で症状を軽くすることができます。花粉症を伴っている場合は、花粉症をうまくコントロールするとOASの症状を軽減させることが出来る場合がありますので医師と相談して、内服薬を継続してください。
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